Apple 社名の由来の真実

2020.05.17

「Apple」ジョブズはどうして、自分の会社にこの名前をつけたのでしょうか。
Apple社は、この名前の由来について、とある事情があって公式な発表を行なっていません。それゆえに様々な説が噂されていますが、どれも納得のいかないものばかりでしょう。
ジョブズが亡くなった今、このままでは真実が失われてしまいます。

私は、30年来のAppleファンとして、本当の由来を知る者として、ジョブズが「Apple」という名前に込めた想いについてお話ししておきたいと思います。

レインボーカラーの頃のAppleマーク

間違いだらけの諸説

「Apple 社名 由来」で検索すると、いくつもの説が出てきます。
どれもそれらしく語ってはいますが、ほぼすべて間違って解釈しています。

・「ATARI社」よりも電話帳で前にくる名前にしたかったためとする説

最も多く耳にする説です。映画や書籍でもこう語られているものがあります。
しかし、これではAppleと名づけた説明としては不十分です。Almond(アーモンド)や、Apricot(アプリコット)ではいけなかったのでしょうか? どちらも電話帳でATARIより先にきますし、AlmondいたってはAppleよりも上にきます。
果物の名前にこだわる意味もないでしょう。
電話帳の順番で勝ちたい。ジョブズは、こんなくだらない理由で社名を決めるような、安っぽいセンスの人物ではありません。

・ビートルズのファンだったので、レコード会社「アップル・コア」の名前からとったとする説

実にナンセンスな話です。
もし、あなたがAKB48のファンだったら、自分の会社に「AKB社」とつけるでしょうか。アリアナ・グランデのファンだったら、「アリアナ社」とつけるでしょうか。
ファンであればあるほど、そんな名前をつけたりはしないでしょう。
それに、ジョブズはビートルズのファンというより、ボブ・ディランのファンだったことで有名です。
そもそも同じ社名にしたら、後で問題になるのは明らかです。実際に、商標権をめぐって何度も法的闘争になっています。自分が好きなアーティストとケンカしたい人なんていないでしょう。

・ニュートンのリンゴであるとする説

これはリアリティのある説ではあります。
確かに、昔Apple Computer社のマークに、ニュートンの絵が使われていたことがあります。
(これはApple社自らが、社名の由来を偽るために考えられたマークです。なぜ偽る必要があったのかは後述します)
ニュートンのリンゴだとしたら、Apple社のリンゴのマークが少し欠けているのはなぜでしょう?
ニュートンは落ちて来たリンゴをかじったのでしょうか。落ちたとき凹んだのでしょうか。そんなエピソードはありません。
Apple社のリンゴマークが欠けているのには、もっとすてきな理由があるのです。

“Apple”は、元々は社名ではなかった

諸説に対する否定的な意見はこれくらいにして、本題に入るとしましょう。
Appleという名称にした理由を知るには、Apple社が誕生した経緯を知っておく必要があります。
ジョブズはApple社という会社を設立してから、パソコンを開発をしたわけではありません。その逆です。
当時、友人ウォズニアックが発明したパソコンは、画期的なものでした。ジョブズとウォズニアックは、そのパソコンを世に出すために、製造・販売してくれるパートナー会社を探しました。しかし、コンピュータマニアが集まるイベントでプレゼンしても、ATARI社に売り込んでも、そのパソコンのすばらしさを理解してくれる人は見つかりませんでした。
困ったジョブズたちは、「自分たちで作って、自分たちで売ろう!」と考えたのです。そして、ジョブズの実家のガレージで、仲間と共にパソコンを組み立てはじめました。
このあたりの経緯は、ジョブズに関する映画を観た人、書籍を読んだ人ならご存じでしょう。
ジョブズはパソコンを作って売りたかったのであって、起業家になりたかったわけではないのです。起業するよりも先に、製品=ウォズニアックが発明したパソコンが存在しました。

ジョブズは、そのパソコンに「Apple」と名づけたのです。

その後、起業した際に、パソコンの名前をそのまま会社名としました。
「起業→パソコンの開発」ではなく、「パソコンの発明→起業」です。この順番を取り違えると、Apple社の社名の由来を理解することはできません。

Apple誕生!

Apple社の製品というと、iPhoneやiPad、Macなどが思い浮かびます。少し昔なら、Macintoshも知っているでしょう。
しかし、最初に発売されたものは、先に述べたように「Apple」という名前のコンピューターでした。

Apple Ⅰ
出典:earlyteches.com/

これがジョブズたちが販売した最初のコンピューター「Apple」です。
木製の本体に、名前も手彫りで、いかにも手作り。なんともかっこいい、ジョブズたちの想いがこもったパソコンです。
後に後継機、AppleⅡシリーズも発売されています。

Apple=リンゴではない?

では、なぜジョブズは、このパソコンに「Apple」と名づけたのでしょうか?
実は、英語のAppleには「リンゴ」という意味のほかに、もう一つの意味(ニュアンス)があるのです。
男性の喉仏のことを英語で、「Adam’s apple」と呼ぶことがあります。(参考:ejje.weblio.jp
このAdamとは、旧約聖書のアダムとイブのアダムのことです。
「Adam’s apple」という呼び名の由来は、アダムが禁断の果実を食べたときに喉に詰まらせた、その名残りという意味だそうです。
つまり、英語のAppleには、リンゴという意味のほかに、禁断の果実=知恵の実という意味もあるのです。

ジョブズは自分たちが作ったパソコンに、「知恵の実」という意味を込めてAppleと名づけたのです。

なんてピッタリな名前でしょうか。
パソコンは、まさに現代の知恵の実です。
当時のパソコンは、今と比べるとはるかに性能の低いものでしたが、ジョブズはその可能性をも予見していたのでしょう。
さすが、ジョブズ。そのセンスと哲学には感動します。

ところが…

名前の由来を公表できない理由

Apple(知恵の実)。とてもすてきなネーミングです。
ところが、これを聞くと怒りだす人たちがいるのです。
それは、キリスト教の教会です。
アダムとイブの禁断の果実は、神様が作ったものです。知恵の実を作って売っているなんて言ったら、「お前は神様にでもなったつもりか!」と激怒されることでしょう。
教会からすれば、ジョブズたちは神を騙るペテン師、そう呼ばれても仕方ありません。
ジョブズ個人はどう思っていたかわかりませんが、会社としては教会を敵にまわすわけにはいきません。
これが、Apple社が自分の社名の由来を公表できない理由です。

社名の意味を偽った例

Apple社自身も、自社のマークにニュートンの絵を用いることで、Apple=ニュートンのリンゴと語っていたこともあります。

Apple社ニュートンのリンゴマーク
出典:iphone-mania.jp

なんてAppleらしくないマークでしょうか。ジョブズが考えたものとは、とても思えません。

マークを考えたのはジョブズ本人

こちらがジョブズが考えたAppleのマークです。当初のAppleのマークは、レインボーカラーでした。

レインボーカラーの頃のAppleマーク

Appleのマークを考えたのはヤノフ(ジャノフ)というデザイナー、こう思っている人もいるかと思いますが、それは違います。
マークのアイデアを考えたのはジョブズ本人で、それをデザインとして仕上げたのがグラフィックデザイナーのヤノフです。
ジョブズがデザインを描いてヤノフに仕上げを頼んだところ、ヤノフは色の境界に白い空白を入れて仕上げてきました。

ヤノフ デザインのアップルマーク
(想像図)
ヤノフ デザインのアップルマーク
(想像図)

その頃の印刷技術では、彩度の高い色を隣り合わせにすると、インクが滲んで汚くなってしまうからです。
しかし、それを見たジョブズは、「なんで白い空白なんて入れるんだ!」そう言って、ヤノフにやり直しを要求したというエピソードが残っています。
ジョブズが自分の考えたAppleマークに、強いこだわりを持っていたことがうかがえます。

Appleマークに込められた想い

Appleマークの右側は、少し欠けています。
「なんで欠けているんだろう…」不思議に思った人も少なくないでしょう。

この欠けてる理由についてデザイナーのヤノフは、「ほかの果物と勘違いされないため。はっきりとリンゴだとわかるようにした」とコメントしていますが、それは偽りです。
当たり前ですが、欠けていない方が、よりリンゴらしく見えるでしょう?
Appleと名前が書かれているのに、リンゴ以外を連想するはずがありません。

この欠けた形もジョブズ本人のアイデアによるものです。
この欠けた部分は、リンゴが一口かじられてる様子を表しています。これには、ジョブズならではの、とてもすてきな想いがこめられているのです。

Appleをかじったのは誰でしょう?

では、最後に一つクイズを出します。
このAppleをかじったのは、いったい誰だと思いますか?
少し考えてみてください。

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わからない人は、もう少し考えてみてください。
ジョブズたちは、Appleを作って売っていたのですから…

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Appleをかじったのは、 “ あなた ” です。
ジョブズたちはAppleを作って売っていたのですから、それを食べるのは、当然それを買った人。つまり、ユーザーたちです。

Apple、Mac、iPhone… これらを手にした人(口にしてしまった人)は、それを知らない純真で無垢な自分には、もう戻れないのです。

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